日月日誌 hitsuki nisshi  

来し方行くさき今の日誌

赤羽の想い出その3

赤羽第三話。

赤羽というのは不思議な街でした。

赤羽会を経験した後、

『東京都北区赤羽』

という秀逸な漫画を会社に持ってきて、教えてくれたのもH先輩でした。

 

なぜか赤羽には銭湯の上に、自由の女神像が立っているという。

 

なんでだろう?

 

自由の女神といえば、NY。

ニューヨーク。

にゅうよーく。

にゅうよく

 

・・・入浴(´゚д゚`)!?

という感じの小ネタをはさみつつ進行する、

すばらしく人間味にあふれた漫画でした。

 

「おーつくん、みたかい?

このケサラン・パサランの下りなんか最高だろ?(笑いをこらえる)」

「(笑いをこらえながら)ハッ!そういえば、私、

原宿駅でケイティーさん見ました!ほんとにあのまんまでした!」

 

という隠語(?)でのやりとりで、一週間くらい盛り上がり、

私にとって、赤羽とは、見ず知らずの土地ながら

そんな面白い人の集う場所としての親近感が養われていきました。

 

H先輩は、万事そのように、付き合いもよく、面倒見もよく、甘え上手。

ほんとうに、誰からも、好かれていた。

 

そんな、あるとき、

「時計はサー、片腕にすると体重がかたよっちゃって嫌なんだよ」

とかねてから言っていた先輩の腕に

見慣れない大きな素敵な時計があるのを発見しました。

 

「あれ?先輩、時計買ったんですか?」

「え?ああ…うん、まあね」

 

ああ、そうなんだ!と瞬時に分かった。

 

 

それから程なく、H先輩がかねてから付き合っていた人と

結婚することを聞きました。

 

「いい大学を出て、二十代の終わりに結婚して、

仕事も順調で、ふつうだったら鼻持ちならない感じなのに。

Hさんだから、みんな嫉妬もない……すごい!」

 

そう思いました。

 

私たちのチームは全員、結婚式に呼ばれ、

私はC先輩と精一杯の正装をして出席。

小さいけれど、素敵な式でした。

結婚式によばれたことも、私は嬉しかったのです。

会社の人間関係でそんな素直な気持ちになるとは、

思ってもみないことでした。

 

それからというもの。

外食をこよなく愛していたH先輩は

毎日巨大なお弁当箱を持って会社に来るようになり、お昼休みには

私たちはそれをネタに一週間くらい冷やかしたのでした。

そして、左の薬指に指輪が光るということが

こんなに儀式的なインパクトを伴うことなんだと、わたしは隣の席で

ものすごく感じ入ったのです。

「なんだかちょっと…先輩は遠くになった」

そうも、感じました。

 

しかし、そんなイベントをとおしつつ、

私は会社で少ないながらも人間関係を築き、

やっていくことができていました。

 

そうこうしているうちに、人事異動の時期が近づいてきた。

「今年は異動するかもしれない」と察していた先輩が

あるとき私にこういった。

 

「ボクは、自分が絶対に編集者になるんだと思って入社したけれども、

もしかすると、ボクはね、編集部にはいけないかもしれない。

でも多分、別の部署にいても、

すごくいい本だけどすぐには売れないような本を作る人がいるのなら、

ボクはそういう人のサポートは出来ると思ってる。

だからおーつくん、頑張るんだよ。ボクは期待している」

 

私と先輩の本の趣味は結構被ることがあり、

そのことで、私を買ってくれることが多々ありました。

しかしながら私はこの頃、会社員としては自分の存在価値は

皆無に等しいように思える、と思いはじめていたので

 期待してくれる人がいるのに、どうして私はこんなに鬱屈しているのか?

そう感じ、コメントが非常に堪えました。

 

異動辞令の出る日。

予想通り、H先輩は

宣伝部に新設された「IT推進部」に異動になりました。

 

電子書籍やネット販売を司るらしい部署。

 ほぼ一日座りっぱなし。

外回りの好きだった先輩には、つらいだろうな…と思った。

かならず先輩の前を通らないと席に行けなかったので、

毎朝手を振って挨拶をする。

 

それから実に、

日に日に先輩の顔色が優れないのが目につくようになっていきました。

でも「異動したのだから、他部署に口を出すまい」

という意志を感じていたらから、

ほとんどしゃべることもなくなっていました。

 

でも、ある朝、先輩が青い顔をしていたのがやけに気になりました。

たまりかねた私は

「Hさん、顔色あんまりよくないけど、体調とか大丈夫ですか?」

とメールを送ってみた。

早速返信があった。

 

「うむ。あまりよくない。

でも、昨日病院に言ったら、

ナースのおねえさんがかわいかった」

 

そうか…あんまりよくないのか。病院に行ったのか。

いちおうメールしたし、私が気遣ってるのはわかったよね。

何かできることなんてないし、まあしかたがないか…

なんてことを思ったりした。

 

その数日後。

風のうわさでH先輩が入院したとの情報が入ってきました。

確かに、空席。

先輩、やっぱり風邪こじらせたのかな…顔色悪かったもんな、、、

 そして、〇〇病院に入院したらしいよ…と聞いた私。

風邪でもこじらせたのかな?

「じゃあお見舞いにでも行こうかな~」と社交辞令を含みつつ言うと

「うん、行ってきて行ってきて!」と、宣伝部の担当部長。 

それから毎日、行ってきたの?と聞くので、

「早く行け、薄情だな~」と言われているみたいに思われて、

そんなに心配してないにもかかわらず、

私はその週の週末に急いでお見舞いに行くことにしました。

 

つ…つづく!